パリクティン火山 奇跡の教会 メキシコ

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メキシコ南西部、ミチョアカン州の不思議な教会訪れました。

メキシコ地図
メキシコ南部 青印がパリクティン 赤印はメキシコシティ

パリクティン火山
1946年2月20日、先住民タラスコ族の農夫が畑で作業をしていると、昨日までなかったはずの長さ25mの地割れを見つけました。とっさにその状況を理解できなかった彼は、なんと地割れを土で埋めようとしたのですが、やがてその作業の虚しさに気づき役場に届け出たそうです。
ところが再び畑に戻ってみると、地割れから火山灰の噴出が始まっており、さらに高熱の噴石が吹き出し始めたのです。噴石の量は膨大で、翌日には高さ10mまで積り、一週間後には165m、そして1年後には300mになったと記録されています。

パリクティン火山 溶岩 教会 スコリア丘
地割れから生まれた巨大なスコリア丘

結局、火山活動は1952年まで続き、基底部の径650m、高さ400m超の巨大スコリア丘が形成されました。その間、新たにできた火口からは大量の溶岩が流出して、約2km離れたパリクティン村と、5km離れたパランガリクティロ村が呑み込まれたのです。

パリクティン火山 溶岩 教会 スコリア丘
溶岩帯 左奥にスコリア丘 中央右に教会の鐘楼


溶岩帯の面積はおよそ20k㎡、東京の品川区に相当するエリアが真っ黒な死の世界に変わってしまいました。
幸いにも溶岩の粘性が高かったために流速が遅く、一人の犠牲者もなく住民は村ごと安全な場所に移転しました。

パリクティン火山 溶岩 教会 スコリア丘
馬に揺られて2時間 スコリア丘が迫る


スコリア丘
火山活動が止まって60余年、今では雑草の緑が混じる溶岩帯を迂回して、地割れにできたスコリア丘に向かいます。最寄りの村から丘まで約13km、車が進入できない火山灰ルートを馬の背に揺られて約2時間。さらに丘ふもとで馬を休ませ、急傾斜の噴石を登ること1時間で、頂上となるスコリアの火口外縁に到着します。

パリクティン火山 溶岩 教会 スコリア丘
スコリア丘付近では今も蒸気が噴出している


頂上から見下ろす火口は奈落の底のようで、いたるところから蒸気が噴出しています。

パリクティン火山 溶岩 教会 スコリア丘
火口部分と頂上 右手に小さく人が見える


同じく火口外縁から下界に広がる溶岩帯を眺めると、あらためてその広さに驚きます。写真では分かりませんが、後述「奇跡の教会」の一本の鐘楼が小さく見えています。

パリクティン火山 溶岩 教会 スコリア丘
溶岩流の跡 画面左奥に教会鐘楼が小さく見える

奇跡の教会
溶岩に吞み込まれた先述パランガリクティロ村に、「奇跡の教会」と呼ばれる廃墟があります。教会は溶岩帯の外縁から150mほど入った場所にありますが、溶岩層の厚さは5~8mほどもあり、瞬間停止した荒波のような酷い地形が行く手を阻みます。転倒転落に気を付けて進むと、黒い波に浮かぶような鐘楼と聖堂が見えてきます。

パリクティン火山 溶岩 教会 スコリア丘
溶岩帯に浮かぶ教会 中央が鐘楼 左に本堂が残る


当時、溶岩流は津波のように聖堂を破壊しながら圧し潰しました。しかし溶岩流が冷え固まり調べると、なんと教会の一本の鐘楼が無傷のまま残り、聖堂内に侵入した溶岩がまるで思い止まったように祭壇前で動きを止めていたのです。

パリクティン火山 溶岩 教会
残された祭壇と手前で止まった溶岩塊


敬虔なキリスト教国ですから、この不思議はまさに神力と敬われて、廃墟の教会は新たなパワースポットとして蘇りました。

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参考 月刊ムー2014年11月号「サン・ファン・パランガリクティロ教会」 写真・文 鈴木革

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