travel jordan wadi rum
中東の国、ヨルダンの南部に位置するワディ・ラムは、険しく美しい岩山砂漠の大自然と1万年以上に及ぶ人類史の舞台です。
上写真:広大な砂砂漠と岩砂漠の絶景 ツァー用の四輪駆動車が連なる
ユネスコの紹介記事を引用、補足します。
『ワディ・ラムは740㎢(東京23区の1.2倍)の保護区で、峡谷や自然のアーチ橋、断崖や洞窟など変化に富んだ砂漠の景観がある。2万5千点のペトログリフや2万点の碑文が、約1万2千年にわたる人間と自然の共存を証し、人類の発展と初期の文字の解明、牧畜や農業の進化過程を示している』
ワディ・ラムの語源について諸説あるのですが、アラビア語でワディは「谷」、ラムは「高い」または綴り違いで「砂」という意味なので、「高い谷」「砂の谷」という説があります。また別世界のような景観からValley of the Moon、「月の谷」とも呼ばれています。
この珍しい地形は、2億年以上前の浸食耐性に優れた砂岩層(Umm Ishrin Sandstone)が、永い年月によって削り出されたもので、鮮やかな赤色は鉄分が多いからだそうです。このあたり地質学の素人の私には読解が難しかったので、間違えていたらどうかダメ出し願いします。
人類史にかかわるペトログリフについてはほぼ未解明です。
ラクダや牧畜風景が描かれたサイトは、比較的新しいことは一目瞭然ですが、最も古いと思われるカザリ峡谷に関しては、どれくらい古いのか、何を表現しているのかまるで見当が付きません。
ペトログリフは岩の表面を削って、内部の地色を出して絵を表現します。つまり、古い岩石は表面が色褪せ、錆で黒ずんだり赤黒くなりますが(英語でpatina 古色)、それを削ることで明るい地色を出して絵を表します。
上写真:比較的に新しいラクダなどのペトログリフ。
これを踏まえてラクダなどのペトログリフを見れば、明らかに削った面が新しいことが分かります。また彫り自体も、物理的に浅くて稚拙な感じを受けます。
一方でカザリ峡谷の作品は、彫られた面もすでに周囲と同色化しており、かなり古い作品であることが明らかです。くわえて彫刻も深く滑らかで、手間のかかった仕上がりです。
憶測ですが、カザリ峡谷のペトログリフは、数千年~1万年も昔の作品ではないでしょうか?
見れば見るほど不思議な絵で、深遠な意味が秘められているようです。おそらく超古代人が未来に伝えるメッセージが隠れているかもしれません。
ワディ・ラムの観光について、見所が広範囲に点在しているので四輪駆動車が必要です。
初回の訪問ではラクダをチャーターしたのですが、風情はあるものの行動範囲が狭くて、重要な見所がまったく回れませんでした。それに長時間の乗馬(駱駝)で、尻が痛くなった記憶も残ります。
そこで2回目は四輪駆動車を手配、そのうえで砂漠のテント・ホテルに数日滞在、ゆっくりと腰を据えて主要ポイントを回りました。実際走ってみると、あらためて保護区の広さに呆れます。しかも各ポイントで、車を置いてからの最終アクセスで泣かされます。というのも、場所によっては岩登りが必須なのです。
ガイド氏のアドバイスで、手足を掛けるポイントを確かめながら岩山を登るのですが、その最中、ガイド氏が「2年前、ここで白人女性が落ちて亡くなったよ」とか、怖い情報を伝えて注意を促すのです。
自分を信じて、下を見ないように、懸命に登るだけです。
ワディ・ラムの登りでは、日本のようにロープや鎖も無いので、絶景見学には十分気を付けてください。
ワディ・ラムのテント・ホテルは景色の良い場所に設置されています。
できれば満月に滞在すると、文字通り「月の谷」が月明かりに浮かび上がります。
私の滞在期間は夜風がなかったので、砂嵐の洗礼にも遭うことなく、青い光に浮かぶ赤い絶壁を眺めることができました。
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