travel turkey karahantepe
紀元前1万年。エジプトやメソポタミア文明よりはるかに古い古代文明があります。
トルコ南東部シャンルウルファ県。このエリアはクルド地域とも呼ばれるシリア国境の近くです。
近年、この辺りでは紀元前1万年頃の遺跡が複数見つかり、世界の注目の的になっています。
遺跡群は農耕開始前の先土器新石器時代、エジプトやメソポタミア文明よりさらに数千年も古い時代のものです。
今回ご紹介するのは、まだ認知度の低いカラハンテペ遺跡です。
近くには2018年に世界遺産に指定され、一躍有名になった姉妹遺跡のギョベクリテペがたいへん賑わっています。
一方カラハンテペは、1997年に研究者が石柱露頭を見つけましたが、本格的な発掘は2019年に始まった新しい遺跡です。
しかし、すでに4基の巨石建築が見つかり今後ますます目が離せません。
カラハンテペの遺跡入口から発掘現場へ続く上り坂。テペとは「丘」を指し、一般に「遺丘」と訳される。
これら超古代遺跡群の特徴は、擬人化された「T字型巨石柱」です。
「擬人化」というのは石柱の両側面に「前部で組んだ両腕」のレリーフがあり、まるで人型を模したように見えるからです。
基本的な構造は、T字型巨石柱を不定間隔で並べ、その間を石積壁でつないだ径数十メートルの建築です。
上の写真は「腕のレリーフ」がよく見えるが、T字型石柱の形状は背後の2柱がよく残している。3柱ともに発掘前の露頭部の損傷が激しい。
ギョベクリ・テペは石柱のレリーフが有名ですが、カラハンテペでは全く未知の列柱神殿(?)が見つかり、「男根崇拝」があったのではないかと推察されています。
男根崇拝の神殿も思しき構造ABは露天掘りで彫り抜いた石窟構造です。石柱群も一本を除き岩盤から彫り出されています。側壁には石柱をにらむ頭像があります。
超古代遺跡の凄さは、これまでの考古学の定義を覆したことにあります。
かつて「文明」とは、「農耕・社会・儀式」という一連の文化のセットを指していました。
しかし狩猟採取の石器時代に、このような神殿のような建物が造られ、社会と儀式の存在が明らかになったのです。
この時代は最終氷期が終わり温暖化が進んだ頃で、今のような乾燥地帯ではなく豊かな草原が広がる湿潤な気候だったことが分かっています。
狩猟採取民というと「小集団で移動して狩猟を行ったイメージ」がありますが、この時代のこの地域では野生の動植物が豊富で大集団の定住ができたのです。
そして集団は規律と儀式を育み、やがてこのような大きな神殿を作ったのです。
構造ADは半分が岩盤の削り出しで、残り半分はギョベクリテペと同じ巨石柱と石積み壁の内周を持っています。
遺丘の頂上部には謎の円孔群が穿たれています。このような円孔はギョベクリテペ遺跡にもありますが、実は世界中の先史文明に頻繁に見られます。しかしその目的や用途は不明で、シンプルながらも興味深い遺物です。
カラハンテペの発掘調査はまだ続いています。
この荒地から、次はどんな古代メッセージが現れるのか本当に楽しみです。