travel turkey gobeklitepe
紀元前1万年。古代エジプトやメソポタミアより、はるかに古い文明がありました。
場所はトルコ南東部のシャンルウルファ県、シリア国境近くのクルド地域です。
今回は少し難解なテーマですので、どうか一緒に考えていただけませんか?
近年、この一帯では先土器新石器時代、つまり「土器を持たない石器を使う人々」の巨石建築が次々と発見されて世界の注目を集めています。すでに当サイトはカラハンテペ遺跡を紹介しましたが、今回はこれら一連の巨石建築の代表格であるギョベクリテペを紹介します。
ちなみに重複する説明は省きますので、カラハンテペのページもご覧ください。
ギョベクリテペは1963年にトルコ、アメリカの2大学の合同調査で初めて記録されました。しかし当時は巨石の露出部分を墓標と見なしたため、大きな関心を集めるには至りませんでした。
その後1994年、ドイツの考古学者シュミットが再調査、露出部分が巨石柱の頭部であることを突き止め、翌年から発掘開始、すぐに最初のT字型(ハンマー型)の巨石柱が見つかりました。
上写真:ドーム内の4基の円形構造のひとつエンクロージャーD。T字型巨石柱は4~6mにおよぶ。
ギョベクリテペは、巨石柱を組み合わせた歪な円形の複合建築です。巨石柱はカラハンテペと同じくT字型で、構造体の中心に向かい合って立つ2柱と、それを取り囲む複数の石柱と積み石で周壁が造られています。
現在は宗教施設であったと推察されているので、円形神殿といえば分かりやすいでしょうか?
英語では単に「エンクロージャー/enclosure/囲い」と呼んでいます。
上写真:ドーム内のエンクロージャーC。中央に向かい合う2本の巨石柱。2重の周壁。
訪問時は円形構造が6基発掘されており、そのうち隣接する4基が遊歩道を備えた巨大保護ドームで覆われていました。各円形構造には便宜的に名前が付けられており、保護ドーム内の4基がA~D、ドーム外にE、Fがあります。(追記:執筆時は未発掘も含めて合計20基が確認されています)
ギョベクリテペの巨石柱には謎めいた浮彫が施されています。それは様々な動物や鳥類、さらに意味不明の図柄もあります。ここでは1基の石柱の浮彫について、英国エジンバラ大学が非常に興味深い説を発表しているのでご紹介します。
上写真:エンクロージャーA Pillar 2。角の有る四つ足動物、キツネ、鳥類の浮彫。
問題の浮彫は、保護ドーム内のエンクロージャーDの周壁にある「ヴァルチャー・ストーン/vulture stone/ハゲワシの石」と呼ばれる石柱です。
ここには複数の鳥、サソリ、オオカミ(イヌ?)、そして円盤や幾何学文様が全面に彫られています。同大学は「これらの動物は星座を示しており、その位置関係が天体の星座配列に対応する」と推察、そして「この配列を暦として見るなら、紀元前10950年を表す」という新説です。
上写真:エンクロージャーD Pillar 43。動物と星座の対応イメージ。
つまり、長期的に変動する星座の位置関係を分析すると、浮彫は「紀元前10950年にギョベクリテペから観察された星座」であるというのです。
問題はここからです。
紀元前10950年とは、数百年の誤差でヤンガー・ドリアス期と一致します。ご存じの方もいるでしょうがヤンガー・ドリアス期とは、最終氷期の終了にともなう温暖期が、突然に寒冷化に転じて千数百年間続いた謎の亜氷期です。
この寒冷化の原因として、もっとも有力な説が隕石衝突です。近年の研究によると、グリーンランドの氷河の下の巨大クレーターが、その隕石衝突跡の候補と見られています。もしそれが事実なら、衝突で巻き上がった粉塵が空を覆って太陽を遮り、長期にわたる寒冷化の原因となります。
上のイラストはgoogle mapの地形図。両遺跡はいずれもハラン平原を見下ろす場所にあり、天体観測にはうってつけ。古代人はここから天体観測をしたのだろうか。それにしても、ハランは旧約聖書のアブラハムの故地であり、そこにも深い訳がありそうだ。
したがって「ヴァルチャー・ストーン/vulture stone/ハゲワシの石」の浮彫は、カタストロフィー的な異常気象の原因となった天体記録であるというのです。
いかがでしょうか?
本タイトルに「最後の超古代文明」としたのは、アトランティスやムー大陸伝説のように「繁栄と滅亡を繰り返す地球文明」というマクロなロマンに立って、エジプトやメソポタミアから続く現歴史時代の前の、「超古代文明としてギョベクリテペがあったら楽しい」と妄想したからに他なりません。
発見されてから年月の浅い遺跡ですから、研究もまだ端緒に着いたばかりです。しかしこの大発見と研究は次々と考古学の定説をひっくり返しており、今後ますます目が離せない台風の目になっています。
下に、エジンバラ大学の報告を貼っておきます。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/1751696X.2024.2373876#d1e222
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