travel mexico toltec tula
メキシコには古代遺跡が数えきれないほどあります。
実際どれくらいあるのか? 手元の地図で80ほど数えましたが、表記されていない遺跡もあるので、やはり「数えきれないほど」といってもよさそうです。
ちなみに世界遺産は35件で世界7位、日本の25件(第11位)を上回ります。参照:キッズ外務省
中米といえばマヤ文明が有名ですが、中米の古代文明はまとめて「メソアメリカ文明」と呼び、マヤはその1カテゴリーなので「マヤ文化」というのが正しいようです。そしてマヤに並んで有名なテオティワカンやアステカ、オルメカ、トルテカなどの文化があります。
今回はその中のトルテカ文化の主要遺跡トゥーラを訪ねます。
トゥーラはメキシコシティの北75km、同じく中央高地にあって標高2000mを超えます。近くのテオティワカンの没落後に興り、AD900-1150年に栄えました。あいにくテオティワカンやティノチティトラン(メキシコシティのアステカ文化)に比べると研究が進んでいません。
上:筆者が初めて訪れたマヤ遺跡チチェン・イツァ。後期建築である戦士の神殿にトゥーラの影響が推察される。
興味深いのは、遠く離れたユカタン半島のマヤ遺跡の後期建築との類似性が見られることです。なにしろ両遺跡は直線で1100km以上も離れており、高地と低地、自然環境もまるで違います。千年もの昔、2者に交流があったのでしょうか。謎です。
トゥーラを初めて訪れたのは30年前です。日記を読むとメキシコシティからの日帰りで、それも不便な路線バスで訪れていました。ですから記憶が曖昧ですが、バス停からずいぶん歩いたと思います(あらためて地図を調べたら、バス停から遺跡中心まで3km以上)。でも神殿Bの戦士像の印象が強烈で、おそらくそれが2回目の訪問に繋がりました。
2回目は車を使って1泊、ゆっくり散策しました。なにしろ遺跡は主要部だけでも300m×600mもあり、神殿のほか美術品も多く、日帰りではとても時間が足りません。
10万人を収容できる、という大広場を囲んで神殿や宮殿が建っています。
なかでも戦士像が並ぶ神殿Bは有名です。実際登ってみると、まず像の大きさに驚かされます。遠目には分からなかったのですが、高さが4.6mもあり圧倒されます。やがて対称的に愛嬌ある表情に笑みがこぼれます。でもそれは表面的なイメージで、トルテカの歴史にはおどろおどろしいものがあります。
圧巻は、広場の東に建つ神殿C塔頂からの眺望です。神殿Bの全容と、奥に続く宮殿の列柱が見事な配列を見せて、壮大な都市遺構を一望できます。
初日の到着時は曇天でしたが、夕方には晴れて陽光を浴びた神殿が映えます。絶景です。
トゥーラは歴史的な重要性のわりに訪問客が少なく、その理由に世界遺産指定がないこともありそうです(2023年現在)。 でも旅好き、遺跡好きには「閑散」が何よりもの贅沢です。
メキシコの古代神殿は、遺跡保護と旅行者の転落防止のため、次々と神殿登頂禁止が増えています。幸い近年の情報でもトゥーラの神殿はまだ登れるようです。
見事な戦士像を間近で見られるうちに、または旅行ブーム到来によるごった返しの前に、ちょっと不便なトゥーラ遺跡の見学してはいかがでしょうか。