travel peru lake titicaca and amantani
南アメリカにある世界一高いチチカカ湖の古い思い出です。
この湖はアンデス山脈の奥深く、ペルーとボリビアの国境に位置し、汽船が通る湖としては世界最高の標高3810mにあります。また面積837k㎡は琵琶湖の12倍強、北海道より少し大きいです。
チチカカ湖は地殻変動によってできた構造湖で、約300万年の寿命を誇る古代湖のひとつです。実は湖の寿命は意外に短くて、土砂の堆積によって普通は数千~数万年で埋まってしまいます。そこで寿命100万年を超える湖は特別に古代湖と呼ばれ、世界でもわずか20例しかありません。
古代湖はその長寿により、固有種はじめ独自の進化を遂げた生物を育んでいます。他にもいろいろ特徴があるのですが、枚挙に暇がないので、ここでは過去の記憶からチチカカ湖をご紹介します。
シルスタニ遺跡:先インカ~インカ時代のアイマラ族の巨大な円形墳墓遺跡。
天空の楽園
標高3800ⅿ。高地特有の低い空は深い青色で、それを映す湖の美しさは言葉にできません。湖のはるか向こうの雲間に、しばしば閃光が見えます。見慣れてしまえば雷光であると分かるのですが、不思議なことにいくら待っても雷鳴が聞こえてきません。
実はあまりに遠くて音が届かないのです。これほど遠い稲光が見えるのは、透明度の高い薄い空気のおかげですが、それにしても湖の広さにあらためて驚かされます。
湖に浮かぶアマンタニ島を訪れました。この島は直径約3.5kmの円形で、本土側の中心町プーノから約40kmほど、乗合船で4時間ほどかかります。島が丸ごとひとつの村といった感じで、人口が3500人ほど、カラフルな民族衣装が映える美しい島です。
当時は宿がなかったので、なんと乗合船の船頭さん宅に泊めてもらいました。ちなみに最近の情報でも相変わらず宿泊施設はなくて、もちろんいまだ車も電気もないようです。追記(2024/08/07):視聴者様のご指摘で現在アマンタニ島には複数の宿泊施設があるとのことでした。
ですからとても不便な島です。でも、きれいに開墾された緑の段々畑と、真っ青な湖面が鮮やかな対比を見せて、至る所で心地よい風が吹き渡ります。というのも、一見すると海のような湖ですが、実は純粋な淡水で、潮風とは異なって湖面から吹き上がる風は格別に気持ちが良いのです。
高地の人類史
アンデス山脈といえばインカ文明が有名ですが、インカはペルー高地に栄えた古代文明の一つで、スペイン征服以前の諸文明はまとめてアンデス文明と呼びます。
アマンタニでは6世紀頃にティワナク族(ティワナコ文化)が住みつき、礼拝所や石垣などを造りました。ティワナク衰退後は現在の住民であるアイマラ族(インカ帝国の被征服民)が住み、現在の美しい田園を造りました。スペイン征服の騒動のなかも、アマンタニは比較的落ち着きを保ち、民族色の濃い暮らしや文化を温存してきました。
一説では、アマンタニとはアイマラ語で「アマン=穏やか、護られた」、「タニ=島」といい、もしそれが正しければまさに「穏やかな島」ということになります。
島の暮らし
民泊した船頭さん宅では、娘さんが料理などのお世話をしてくれます。彼女は小柄な女の子といった感じですが、実は既婚者で立派なお母さんでもあります。ですから家事や育児、農作業、放牧と連日大活躍です。
電気もガスもない島で、おまけに食材も限られており、彼女の手料理は地元野菜と固いパン、湖で獲れた骨っぽい小魚のスープ、唯一の贅沢品が卵焼きぐらいです。でも注意して見ると、魚や卵は客用の贅沢品で、一家の食事はパンと野菜だけです。何か後ろめたい感じですね。。。
このように島の暮らしは極めて質素です。「貧しい」といっても差支えないでしょう。でも風景と同じで、全てが理にかなって「美しさ」に溢れています。もちろん「ずーっと、住みたいか?」と問われたなら、完全に怯んでしまいます。でもその「美しさ」は年月が経った今も、確かに記憶に残っています。
ここに挙げる写真も古くなりましたが、おそらく今でもアマンタニは美しいままだと思います。
ある日、娘さんの放牧に同行しました。わずか20頭ほどの羊の群れをカラフルな衣装が追います。羊たちを叱咤する彼女の声が、低い空に吸い込まれていきます。その澄み透った声は今でも記憶に残っているのですが、写真でお伝え出来ないのが残念です。
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