travel guatemala mayan tikal
ティカルは中米の国グァテマラにあるマヤ文化最大級の遺跡です。
以前トゥーラで紹介しましたが、中米の古代文明は総じてメソアメリカ文明と呼び、その下にマヤはじめ複数の文化があります。またグァテマラでは南の高地にある遺跡を高地マヤ、また北のユカタン半島付近に点在する遺跡を低地マヤと呼びます。
ティカルは低地マヤに属しており、とてつもなく広いエリアに、数えきれないほど建築物が点在しています。しかも周囲は樹高30mの熱帯ジャングルで、遺跡内でも広場に出ないと空も見えないほどです。
おまけに高温多湿、虫も多くて快適とはいえませんが、世界中から人が集まる有名なマヤ遺跡です。
ティカル遺跡公園は東京23区より少し狭い576㎢の面積で、中心部には巨大な神殿ピラミッドが5基、1号~5号神殿がそびえています(神殿ピラミッドの数は定義によって異なります)。
最も建築が密集するのが中央広場で、東西に向かい合う1号神殿(高さ51m)と2号神殿(38m)を軸に、広場北の「北アクロポリス」と南の「中央アクロポリス」の巨大な複合建築が対面して、壮麗な神殿都市を演出しています。
2号神殿は良く整備されており、階段も比較的緩いので登頂が許されています。
神殿上部から見下ろす中央広場はまさに圧巻で、古代人の技術力や造形美に驚くばかりです。
Illustration by Simon Burchell https://www.worldhistory.org/image/3101/tikal-map/
遺跡は中央広場からさらに広がっています。代表的なものとして、中央アクロポリスの南に5号神殿が建っており、その西には「失われた世界」と呼ばれる大きな複合施設が控えています。
また中央広場の西方約700mには、最大のピラミッドである4号神殿が建っています。
ティカル最高の65mという高さは、唯一、上部の展望台が周りのジャングル高を突き抜けて、地平線まで広がる樹海が望めます。
以上が標準的な見学コースですが、これだけでも数えきれないほど建築物があって、一巡するだけでも丸一日はかかります。しかも陽が差さない密林は不快指数100%で、歩き回るだけでたいへんな労働です。
観光地といってもこれだけの規模ですから、時々ジャングルの中で独りぼっちになります。
薄暗い森では絶えず何かしら音があって、はっと振り返ることもしばしばです。だんだん心に滲む弱気に、影のように密林のモノノケが迫ってきます。万象に霊を見る日本人は感度抜群、一人旅はご用心です。
ティカル最大のショータイムは、もちろんドラマチックな朝夕です。
特に朝はピラミッドが陽に映え、また時には霧が立って朝焼けを含んだピンクに染まります。
ティカルの夜明けを見るためには、まず公園ゲートを未明に出発します。しかもゲートから中央広場まで約30分のジャングル行で、辺りは墨汁の中のような暗闇ですから強力なライトが絶対必要です。
ジャングルの暗さは洞窟の比ではありません。洞窟ではライトの壁面反射が周囲をほんのり照らしますが、密林では光が吸収されるので直接照らした範囲以外は真っ暗闇です。
おまけにやたら大声のホエザルが、木々の上で大騒ぎしています。とても耳障りな鳴き声で、まるで侵入者を威嚇するかのようです。
恐怖を乗り越えやっと中央広場に到着。星空を見上げるといいようのない安心感に包まれます。
広場とて決して快適ではないのですが、途中のジャングルがあまりに怖いので、広場の解放感に安心します。
滞在中は幾度も訪れましたが、毎日違う表情を見せてくれました。
連日の恐怖との戦いも、絶景というご褒美で報われます。
グァテマラは遠い国ですし、密林のティカルはさらに遠い場所です。
でも難儀しても一見の価値がある唯一無二の古代遺跡です。
* ティカル取材は過去2回ともに20年以上前です。執筆に際して、可能な限り新情報を調べていますが、現状と異なっている場合もあるのでご承知願います。
* 早朝のティカルは現在もオープン中で、早朝見学ツァーもあるようで安心です。
当Webサイトに掲載された文章や画像の無断転載を禁止いたします。