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インダス文明のモヘンジョ・ダロ遺跡を紹介します。
その前に名称についてモヘンジョダロ、モエンジョ・ダロ、モヘンジョ・ダーロなどが多くて煩雑です。「モヘンジョ→モエンジョ」「ダロ→ダーロ→ダロー」、区切りも有無を含め「・、-、＝」の変形があり、いったい幾通りになるのでしょうか？
せめて有名な外国名は、公的に統一してくれると有難いですね。
ボヤキで始まりましたが、誰もが知るインダス文明は「世界四大文明」のひとつです。といっても「世界四大文明」は日本の造語で、国際的なフレーズはありません。もちろん「Indus Valley Civilization」は世界的に有名ですが。
モヘンジョ・ダロは地元語で「死者の丘」(参照)という意味で、かつて地元民には不吉な場所だったようです。
歴史年代には諸説ありますが、狭義のインダス文明は紀元前２６００～１８００年を指し、モヘンジョ・ダロは前２５００～１８００年に繁栄しました。
インダス下流域に位置しており、平坦な沖積平野にあって長期の人間活動によって遺丘になっています。
丘は大きく東西に分かれます。
東丘は住居地区と呼ばれ、広い道路が数本ずつ東西、南北に走る計画都市で、区画の建築物の立派さ具合から、笑ってしまいますが「金持ち地区」と「貧乏人（職人）地区」と分けられています。
一方、西丘は堅固な城壁で囲まれ「城塞地区」と呼ばれています。
写真でよく見る象徴的な仏塔は後代の仏教遺跡ですが、モヘンジョ・ダロ発見の糸口になったランドマークです。中央に位置する大浴場は儀式に関係した重要建造物で、私見ですが汎インド的な沐浴信仰のルーツではないかと想像します。そのほかに穀倉など公共の建物があります。
沐浴場に象徴されるように都市は上下水施設が完備され、住宅にはダスト・シューターまで設置されていて驚かされます。
４０００年も昔、誰がこの文明都市を築いたのでしょうか？
上写真：ガイド氏の説明では、中央の円筒型建築はインダス川の増水時の井戸であるというが。いずれにしても富裕層エリアは整然としており、立派な建築物が良好に残っている。
パキスタンはインドから独立した若い国で、歴史文化は「古代インド」に入ります。インド史を端折ると先住民は出自不明のドラヴィダ系で、前１５００年頃に北西からアーリア系が移動して、先住民を圧迫しつつも混血して、現インドの民族的な濃淡が形成されました。
したがってモヘンジョ・ダロはドラヴィダの都市だったのです。
彼らは文字を持っていましたが、残念ながら解読されていません。しかし出土品は独立した文化を示しており、遠く離れたメソポタミアとの交流も判明しています。
パキスタンは国内外に諸問題を抱え、国のリソースはインフラや治安が優先され、歴史研究には十分に行き渡っていません。遺跡を散策すると、貴重な遺物がヒョッコリと地上に顔を出していたりします。すでに広大な都市跡ですが、実はまだ未発掘の地区があり、掘ればまだまだ出ることは確実です。文字の解読を含め、今後の調査が待ち望まれます。
上写真：通路に立つローカル・ガイド氏。写真では見えないがこの日は気温５２度。
モヘンジョ・ダロには２回訪れましたが初回は５月でした。当時は治安上、空路で向かい、同じ理由から宿も遺跡の宿舎でした。しかし気温は連日５２度、私的経験の最高値で、近くの町では死者も出たと聞きました。旅の季節は十分ご検討願います。
上写真：カラチ国立博物館の撮影で、２重に施錠された国宝倉庫のオリジナルを出していただきました。世界的に有名な彫刻なので受け取る手が震えました。一般展示室の像は、美術館員が制作したレプリカです。
