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ブッシュマンの古代岩絵をご紹介します。
ブッシュマンの岩絵にはペインティング(絵画)のほか、岩面を削って図柄を描くペトログリフがあります。日本では岩刻画や線刻画、岩線刻などと呼ばれ、それぞれ形態も多様ですが、ここでは英語の「petroglyph」がもっとも相応しいです。
* ギリシア語のpetro-(petra、石)とglypho(彫刻)を合わせた造語。
上図:ナミビア全図。小図は南部アフリカ全体図。トゥウェイフルフォンテーンは太平洋側の内陸の乾燥地帯にある
ペトログリフ・サイトはペインティングより少ないものの、同じく南部アフリカに点在しており、なかでもナミビア北西部にあるトゥウェイフルフォンテーンが最大の密集地として知られています。
岩絵は干上がった広大な谷の河岸段丘の断崖下に、無数に転がる赤砂岩巨石の平坦な面に穿たれており、総数2500点が確認されています。
本来、赤砂岩は鮮やかな赤ですが、表面は長い年月によって黒褐色に色焼けしています。ブッシュマンはこれを削り、地色の赤を剥きだして絵を描きました。
絵のモチーフはゾウ、キリン、サイ、レイヨウ、ライオンなどの野生動物にくわえ、謎めいた幾何学文様もあります。また動物たちの足跡も頻繁に見られます。
作品自体も経年変化で同じく黒褐色に変色しており、制作年代の古さは一目瞭然です。考古学は、およそ紀元前1000年~紀元1000年の約2000年間にわたって描き続けたとしていますが、もしかすると開始は紀元前4000年後頃まで遡るかもしれません。
Lion man
トゥウェイフルフォンテーンの岩絵は、その意味のほとんどが解読されていません。ただ過去回の岩絵と同じく、シャーマニズムに関係していることは間違いありません。そのもっとも代表的な絵をご紹介します。
ペインティングと同じくモチーフには草食動物が多く、肉食動物はかなり少数です。おそらくブッシュマンは肉食獣を忌み嫌っていたようです。そうしたなかで1頭のライオン像が注目を集めています。
ライオンマンと呼ばれる像は、一見すると獲物をくわえたライオンのようですが、よく見ると四肢の足裏が五本指になっています。通常ネコ科動物の足裏は四本指ですから、これはライオンに化身したシャーマンであると分かります。さらに注視すると、後方で上方に折れ曲がった尻尾の先端は六本指になっており、像が現世界のものではないことを強調します。
おそらくライオンに化身した悪意のシャーマンが、何か不幸や災いをもたらすため、肉食獣の潜在力を使おうとしているのかもしれません。
ある専門家の見立てでは、この地を訪れる者への何かしらの警告であると言います。
ペトログリフの解読は難しいのですが、この場所の持つ意味を通じて、微かな手掛かりを次回に続けたいと思います。